

人望あつきマリシュさん
あの時代、一世を風靡したスピードジャンパー、小柄な精鋭アダム・マリシュ(POL)が、今年の2月、2017ラハティ世界選手権のシャンツェ下に出てきていた。 「あいつの、スピードあふれるジャンプが気になっていてね」 当時、ジャンプ週間で表彰台に上がった葛西紀明(土屋ホーム)は、そのときの彼の衝撃的な印象を語っていた。 それはオーベルスドルフLHの80m付近で写真を撮っていても、よくわかった。 太もも裏の強烈なバネによって、サッツからジャンプのピークまでの推進力が猛烈にあったのだ。だからマリシュのときはレンズをほかの選手よりも前方向に進めて構えていた。 あれから幾年たったことだろう。 ポーランドチームの選手たちのスキーを受け取るや否や、すぐにスキーバンドでとめて選手キャビンへと持っていくアダム・マリシュPOLチームコーディネーターなのである。 可愛い後輩たちのためにと、進んで下働きするマリシュ。 そっとカメラを向けるとすぐに『あら、久しぶりだね~』とウインクしてくれたりするから、こちらもうれしくてたまらない。 それだけに、いま最強のチームになり得たポー


とことん頑張る小林3兄弟とユカさん
欧州サマーグランプリと白馬サマーグランプリで好成績を上げて個人総合3位に入った小林潤志郎(雪印メグミルク)、先週の白馬記録会で優勝した小林陵侑(土屋ホーム)、この春に全日本チームに昇格した小林龍尚(盛岡中央高1年)の松尾八幡平出身の3兄弟は、いま絶好調にある。 そこに新社会人として早大卒業後にCHINTAIへ入社、『立派な社会人になりたいです』と懸命に仕事を覚えている小林諭果(CHINTAIスキークラブ)は岩手が誇るスーパーアスリートジャンプファミリーだ。 春先から仕事優先で頑張り抜くユカさんは、やはりいくらかの練習不足となり、いまはまだ、大会順位もひとけた台に甘んじている。しかしながら、その長身を活した「ラージヒルが得意なんです」という豪快なジャンプは、この秋から、雪がつく冬に向けて一気に開花していく。 もちろん、これまで苦手としていた筋力トレーニングも「しっかりやらないといけないですね」と、目的を新たにタフに汗を流している。 こういう一生懸命な社会人女子ジャンパーを応援していくのは、われわれジャンプファンが、やらなければならないこと。 それが


小林潤志郎サマーG総合3位に!
夏場の一大イベント、サマーグランプリが最終戦のクリンゲンタール(ドイツ)をもって終了した。その第8戦で14位に入っていた小林潤志郎(雪印メグミルク)が個人総合で第3位表彰 台に立つ偉業を成し遂げた。個人総合優勝はクバツキ(ポーランド)だった。 これは所属チームの岡部孝信コーチの熱心な指導によるもの。さらには弟の小林陵侑(土屋ホーム)の追い上げや、妹の小林諭果(CHINTAI)の頑張りが、良き刺激になった。そして、雪印メグミルクの吉泉英樹トレーナー(右:元ジャンパー葛西賀子さん)が手掛けるストレングス指導のたまものでもある。 ジュンシロウ、この冬の大活躍に期待したい。


哀愁と感謝のマンニネンとアホネン
なぜ、ここで、走るのだろう。 なぜ、いまだ、飛んでいるのだろう。 北欧フィンランドの名門ラハティのクロカンコースをひたすらに走るハンヌ・マンニネン、 そしてラハティのシャンツェを飛びぬけたヤンネ・アホネンだった。 どちらも世界王者、2000年代当初から、かの名声をほしいままにした。 『私の姿を観て国民の皆さんが、希望に満ちてくれればそれでいい』(マンニネン) 『なんでいま飛んでいるのだろう、いや、そうしなければならない』(アホネン) ともにラハティ世界選手権の会場で2月、写真を撮っていて、そういう想いと彼らの小さなささやきが聞こえてきたように感じた。そう、そのような気がした。 航空機パイロットの仕事をしばらく休んで、よくみればクロカンワンピの下腹がぷよぷよなんだな、マンニネン。 まるで修行僧のように、チームから請われて現役選手を続け、なぜ、飛ぶのかと自問自答を繰り返す、アホネン。 しかし、表彰台を目指して複合団体リレーのアンカーを走るマンニネン、前半は鋭いまでに追い上げたがずるずると後退していった。 果敢にサッツを飛び出したが、ラハティ特有なバッ


かくありき伊東大貴
その寡黙でクールな眼差しの伊東大貴(雪印メグミルク)は、ジャンプ台を訪れるファンの心を魅了していた。そのもの抜群の集中力と、中学生のときから日本の最前線で飛びこなしてきた経験が、いま充分に活きてきている。 とくに好調な時はサッツを飛び出してから、右方向へ寄っていってしまう(観客席からみて左側)という良いクセが見られ、それはもう会心の飛距離を生み出していた。 しかし、先シーズンのジャンプ週間手前あたりから、不調の波に包まれ悩み、そこで帰国の道を選択した。その大貴をていねいな指導で復活させたのが、あの岡部孝信コーチ(雪印メグミルク)。それで2月のラハティ世界選手権では日本選手トップの成績を生み出した。 今季はどうやら12月の欧州W杯とジャンプ週間に、雪印メグミルクの岡部孝信コーチと重鎮である原田雅彦監督が帯同する予定があり、これで2月のビッグイベントに向けて心強いまま、大いなる飛翔が期待できそうだ。 それはまた、右寄りに着地していく彼の鋭いジャンプをにこやかに撮影できるときであろう。 この冬はいろいろと楽しみになってきた。


下川商高スキー部 好調につき。
いよいよきたとの感がある下川商スキー部の女子ジャンプチームだ。 前年のインターハイでは才能ある鴨田鮎華が優勝、この夏場には長身で着実に伸びをみせている御家瀬 恋が欧州コンチネンタル杯で5位入賞、さらには小柄ながら爆発力ある勢藤理桜など、個性的な選手が5~6名も揃う。 それを丹念に指導しているのが、元全日本複合チームの竹本和也コーチ。 「まだまだですよ、手探りの部分もありますから。それでも、全員がしっかりと集中して飛んでくれるからうれしいですね」と、にこやかな表情をみせる。 いわば下川商女子ジャンプ選手たちは、実力的に全日本女子若手チームのような印象にもあり、団体戦があればそのままこのヤングガール4人で出場できる勢いにある。 女子トップチームの高梨沙羅(クラレ)、伊藤有希(土屋ホーム:下川町出身)、勢藤優花(北海道ハイテクAC:理桜の姉)、岩渕香里(北野建設)、ベテラン茂野美咲(CHINTAI)、新社会人の小林諭果(CHINTAI)などに続く、俊英な女子高生ジャンパーにこの冬は注目だ。


充実の秋を迎えた葛西紀明
秋深し、たまに東京の神田に現れ、にこやかに。そして札幌道庁前の赤レンガのステージにすっくと立つ、いたって元気そうな葛西紀明(土屋ホーム)だった。 長野白馬で行なわれたサマーグランプリでは、いつもながらのトライアルキャンセルにつき。ほのかにカメラを構えていると、ちょっぴり肩透かしで『らしくて、いいけどさ』である。 それで夏から秋にかけては、順調なトレーニングを積み重ねて、だと思うw ただ2月のビリンゲン(ドイツ)ファイブではさすがに飛んでおかないといけないような。だって、クオリファイ(予選)の1本も加わり本番5本になるから。 それに札幌はビリンゲンに、この時期のW杯開催を譲ったわけで、まったくもうとは思うが、 同時期、白馬でノルディック複合W杯もあるわけで、いたしかたなく。 懸念されているウエイトコントロールは、このところなかなか体重が落ちなくなってきたという心配も、どこ吹く風。いいんです、マイペース調整でノリさんは。 白馬の定宿で食事の後に飲んでいた温めのブラックコーヒーは、ポットから一杯もらってみたけど、ストレートできつくて。そこで一瞬つらそう


華麗なるまま船木和喜
何年になるだろう、それも故郷余市にある伝統の竹鶴シャンツェをルーツとする、誉れ高き五輪金メダリストの船木和喜(FITスキー)であった。 「今シーズン、とても好調なんですよ。あの昔の感覚が戻ってきました、それもロウアングルの飛行ですね」と嬉しそうに語ってくれる。 そんな彼に、いつまで飛ぶの? そういう問いかけは少々いただけないw 「そうですね、娘にその飛距離を超えられて、着地後に父さんそろそろだねと、肩をポンポンされたら考えますよ」 じつに粋である。 これぞ風林火山の旗印のもと、あのインスブルックで名高いベルグイーゼルの台を席巻した、王者フナキならではの真骨頂! さらにチームの教え子である長身ダイナミックな勢藤優花(北海道ハイテクAC)に注入されるオリンピック金メダルテクニックも、いよいよ花が開きそう。 「いま自分が飛んでいるからこそ、新たに見えてくる技術があるのです。でも、もうちょっと練習を重ねたいですね」 長野五輪の覇者は、まだ思うがまま、生涯一現役の道をひたすらに歩んでいる。