いまや表彰台の常連に

『いまや表彰台の常連に』
宮の森シャンツェの風は順風にも見えていたが、それは気温の上昇とともに、スタートからアプローチそして空中に至るまで追い風、横風など実際には荒れていた。
「1本目は全選手のうちで一番良い風をもらったと思います」
そのまま96.5mの最長不倒を記録した小林諭果(CHINTAI)だった。
タイトルを狙っていける。しかし、2本目はほぼ無風で83mちょうど。着地後、しばし、唇をかみしめてしまった。
「力みがあったかなですね。勝ちたかったなあ」
逆転優勝した高校生の櫻井梨子(余市紅志高)におめでとうと伝えて、静かに控室に戻っていった。
「公式練習から好調で、そのまま挑んだ今日の試合でした。でも、どこかで固まったような、緊張していたのでしょうね」
やや大人しめな80mの飛距離に終わった2本目。札幌五輪記念大会などこのところ悔しさにまみれていた茂野美咲(CHINTAI)だが、今シーズンから新しいメーカーのスキーに履き替え、その特性をつかみ取るまでにたくさんの時間を要していただけに、今日の3位表彰台にまずは満足という表情をみせた。
試合経験豊富なアスリートの良い部分とは、その場での瞬時な修正力があり、試合の駆け引きにたけることだ。
この冬からの中学生や高校生の台頭がすさまじい女子ジャンプシーンにおいて長身選手の小林といまやベテランの域にある茂野は、目前の1試合を大切にして奮闘し続けている。
[飛べ飛べCHINTAIその⑥]
写真・文/岩瀬孝文
photo & text by Yoshifumi Iwase
小林諭果
茂野美咲